ごあいさつ
リウマチ治療(従来薬)
糖質コルチコイド(いわゆるステロイド薬)についてご説明します。
糖質コルチコイドの特徴は、即効性があること、肺や腎などの臓器障害があっても使えることです。
したがって、早く痛みや腫れを良くしたい場合、高齢者などで臓器障害がある場合に少量使用することがあります。
糖質コルチコイドは短期的な副作用はないのですが、長期に及ぶと骨粗粗鬆症のリスクがあります。
なるべく少量、なるべく短期間に限って糖質コルチコイドを使用するというのが原則です。
リウマチ治療の主役は抗リウマチ薬です。
関節の構造と機能を維持するためには抗リウマチ薬が欠かせません。
抗リウマチ薬は正式にはDMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)と呼ばれます。
現在、DMARDsは次の3グループに分けられています。
1. csDMARDs: 従来型合成抗リウマチ薬
2. tsDMARDs: 標的型合成抗リウマチ薬
3. bDMARDs: 生物学的抗リウマチ薬
各々について説明します。
1. csDMARDs
1-1 MTX(メトトレキサート)
MTXは以下の3つの酵素を阻害することがわかっています。
MTXはDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)を阻害して核酸代謝を抑制します。
MTXはTS (チミジン合成酵素) を阻害してDNA合成を抑制します。
MTXはATIC (AICAR葉酸転移酵素)を阻害してアデノシンからイノシンへの反応を抑制します。
MTXのTS阻害が意外と早く効果を現すのに対してDHFR阻害による効果は長い時間がかかります。
MTXは上記の酵素を阻害して、過剰な炎症や免疫にブレーキをかけてくれます。
関節リウマチに対する効果は確立されており、現在ではリウマチ治療のアンカードラッグと言われています。
関節リウマチと診断されたら、まずMTXが使用できれば使用します。
MTXの使用ができない場合は他のcsDMARDsを検討します。
MTXは、血球減少症、間質性肺炎を起こすことがあり風邪症状が出た時には速やかに受診する必要があります。
肝障害を起こすことがありますが、特にB型肝炎キャリアの場合は注意が必要です。
腎機能が低下している場合も注意を要します。
1-2 SASP(スルファサラジン)
抗菌剤のサルファ剤と解熱剤のサリチル酸をアゾ結合してできた薬剤です。
血中濃度ピークは服用後7時間、血中半減期は3時間程度です。
NF-kB、樹状細胞、抗体産生、サイトカイン産生、ATIC、RANKL, MMPを抑制します。
ATIC抑制でアデノシン濃度を上昇させて炎症や免疫にブレーキをかけます。
効果発現は比較的速やかです。
肺や腎臓が悪くても使えるのでMTXを使えない場合に使用を検討しています。
皮膚や粘膜にアレルギーが出ることがあり重症化する場合もあります。
1-3 IGU(イグラチモド)
NF-kBを阻害してTNF, IL-1, IL-6などの炎症性サイトカイン産生を抑制します。
肺が悪くてMTXを使えない場合、MTXが効いているがもう一歩足りないといういような時に使っています。
肝障害を起こすことがあります。
消化管出血をきたすことがあり、ワルファリンとの併用は禁忌になっています。
1-4 タクロリムス(TAC)
脂溶性薬剤で血中半減期は33時間あり、CYP3A4代謝ですので併用禁忌薬があります。
NF-ATを阻害して、Tリンパ球の増殖を抑制します。
糖質コルチコイドの作用増強、血糖値上昇作用があります。
腎代謝ではありませんが、腎障害を起こすリスクがあります。
頭痛、痺れ、震えなどの神経症状が出ることがあります。
肺病変があってMTXを使用できない場合に投与を検討します。
1-5 ブシラミン(BUC)
2個のSH基を有する低分子化合物でわが国では長く使用されています。
血中濃度ピークは1時間、半減期も1時間と短いです。
IL-6, IL-8, MMP産生を抑制します。
単独での効果はやや弱いのですが、MTXの追加薬として使用すると上乗せ効果を現すことがあります。
腎障害、タンパク尿をきたすことがあります。
1-6 ミゾリビン(MZR)
イノシン1リン酸デヒドロゲナーゼ阻害薬でプリン合成を抑制します。
リンパ球が抑制されます。
腎排泄型で血中半減期は2.2時間と短時間なので1日2回ないし3回の内服が基本です。
関節リウマチの治療で使われることは少ないですが、他の薬が使えない場合に使用しています。
1-7 レフルノミド (LFM)
ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHOD)を阻害し、ビリミジンのde novo合成を抑制します。
リンパ球の増殖が抑制されます。
血中半減期は2週間と長く、タンパクと結合し腸肝循環するため更に長く体内に留まるとされています。
有害事象が起こった時の対応に苦慮するため当院では積極的には使用していません。