ごあいさつ

骨粗鬆症

<骨粗鬆症とは>

骨を鉄筋コンクリートに例えてお話しすると、コンクリートがカルシウム成分、鉄筋がコラーゲン線維に当てはまるでしょう。

鉄筋コンクリートも年月とともに段々と弱く虚ろになっていき、地震で壊れたりしますが、そういう状態が骨粗鬆症に該当します。

つまり、骨が弱くなって骨折リスクが高くなっている状態が骨粗鬆症です。

骨の強度は2/3が骨密度、1/3が骨質で決まります。

 

<骨粗鬆症になりやすい人>

血縁者が椎体骨折、大腿骨近位部骨折を起こした人

お酒をたくさん飲む人

喫煙者

閉経後の女性

ステロイド薬を服用している人

以下の病気にかかっている人

  • 関節リウマチ
  • 副甲状腺機能亢進症
  • 糖尿病
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 慢性腎臓病

 

<骨密度の検査法>

骨密度を測定する方法には、QUS法、MD法、DXA法等があります。

QUS法とMD法は主として手足の末梢骨の骨密度を測定する方法で誤差も大きいと言われています。

骨折した場合一番困るのは背骨や大腿骨なのですから、背骨や大腿骨の骨密度を正確に測れないと測定する意義は低いと言わざるを得ません。

背骨と大腿骨の骨密度を正確に測定できる方法がDXA法です。

DXA法では2種類のX線を使って身体各部位の骨密度や体脂肪率を正確に測定できます。

当院ではホロジック社製DXA装置ホライゾンとディスカバリーを使用しています。

 

<骨粗鬆症の疫学>

 DXAの普及とともに骨粗鬆症の有病者数が明らかにされつつあります。

最新のデータでは、我が国の骨粗鬆症患者数は、1300万人だそうです。(うち女性が1000万人)

およその頻度については、60代女性では3人から4人に1人、70代女性では2人に1人、80代女性では大半の方が骨粗鬆症だというデータがあります。

骨密度低下者、つまり骨粗鬆症予備軍は上記の数字の2倍くらいになります。

 

<骨粗鬆症の診断>

若年層の骨密度平均値をYAMと略します。

YAMに対する患者さんの骨密度測定値の割合が%YAMです。

%YAMが70%を切ったら骨折リスクが高くなりますので、骨粗鬆症だと診断されます。

 

<骨代謝>

冒頭の部分で骨を鉄筋コンクリートに例えてみましたが、実は正確な例えではありませんでした。

鉄筋コンクリートには新陳代謝がありませんが、骨は新陳代謝を繰り返して常に新しい骨に作り替えられています。

骨を吸収するのが破骨細胞です。

破骨細胞によって古い骨が吸収された部分に新しい骨を作っていくのが骨芽細胞です。

これらの細胞の働きは、ホルモンやサイトカインによってコントロールされています。

たとえば道路工事では、削岩機で古い道路表面を削って、そこに新しいアスファルトを敷いていますが、我々の骨もそういう作業をしています。

破骨細胞と骨芽細胞がバランス良く働くことによって良い骨質と骨密度が維持されます。

 

<骨粗鬆症の治療>

今日では様々な骨粗鬆症治療薬が使えるようになっています。

 

  • ビタミンD: 腸や腎に働いてカルシウムの吸収を促します
  • SERM: 骨に働く女性ホルモン類似物質で骨質も改善します
  • ビスホス: 破骨細胞の働きを弱めて、骨吸収を抑制します
  • テリパラチド: 骨芽細胞の働きを強めて、骨質も改善させます
  • デノスマブ: RANKL抗体で破骨細胞の分化成熟を抑制します

 

上記の薬物をうまく組み合わせて治療すれば、骨を強くしていくことが可能となっています。

しかし、骨は壊れてしまったら元に戻すことが容易ではありません。

骨折する前に骨粗鬆症治療を始めましょう。

骨粗鬆症も癌と同じで早期発見、早期治療が大切です。

早期発見のためのひとつの方法がFRAXです。

 

<FRAX>

FRAXは Sheffield大学が開発したツールです。

インターネット上に公開されていますので、FRAXで検索すればすぐに見つかります。

FRAXでは、年齢、性別、身長、体重、骨密度などの12項目の数値を入力すると、10年以内の骨折リスクが計算されます。

そのリスクが15%以上の人は骨粗鬆症治療を受けた方が良いと勧められます。

骨密度以外の11項目は誰でも簡単に入力できるものばかりですので、ご自分の骨密度の数値がわからない人でもまずは11項目で計算してみると良いでしょう。

 

FRAXではリウマチとステロイド薬の服用歴が重視されています。

リウマチ患者さんの約40%の方がステロイド薬を服用しているというデータがあります。

ステロイド薬について、FRAXでは、現在服用しているか、あるいは過去にプレドニゾロン5mg以上の服用歴があるかを問われます。

リウマチ患者さんの骨粗鬆症リスクがいかに高いのかがFRAXからも伺えます。